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弁護士の日記帳

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横井先生の記事

連続ドラマW 「下町ロケット」(全5話)

その特許がなければロケットは飛ばない…。

原作は、池井戸潤の直木賞受賞作「下町ロケット」。これをWOWOWがドラマ化したレンタルDVDを見ました。

 

宇宙科学開発機構を追われた研究者・佃航平(三上博史)が亡父の跡を継いだ下町の町工場「つくだ製作所」が最先端特許と従業員の職人技を武器にロケット打上げに成功するまでを描いたドラマです。

倒産の危機に瀕した町工場が団結力と技術に対する誇りで様々な苦境を打破し、壮大な夢を実現させる展開に人間の持つ熱いエネルギーを感じました。

特許訴訟の法廷シーンが実際とは全く異なるなど粗削りな演出も目に付きましたが、全体の出来の良さからすれば取るに足りないものというべきでしょう。

 

海外に生産拠点を移す企業が多数にのぼり、かつての「モノづくり大国」は、深刻な状況に陥っています。

生産拠点の海外移転は、それ自体国内での雇用機会を喪失させるとともに海外労働市場との競争により非正規労働者を増加させます。

当然のことながら国内消費は抑制され、日本経済に大きなダメージを与えます。

 

産業空洞化の原因として、日本の高い法人税率や賃金コスト、厳しい環境規制などが指摘されています。

町工場の衰退は、日本の底力の衰退です。

早急に法人税の引下げを行うべきだと思います。

 

「モノづくりのパワーを再認識する必要がある」――そんなことを考えさせてくれる良質のドラマでした。

(横井盛也)

 

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日本国憲法改正について 2

現行憲法は、改正手続のハードルが余りに高すぎます。

現在ないし将来の国民の意思が憲法制定当時の(形式的な)国民の意思によって不当に厳しく縛られている弊害を正しく認識すべきです。

さしあたって96条の改正を目指すことは、理にかなったことだと思います。

 

確かに、憲法は国の基本法であり頻繁に変わるようでは、政治も社会も安定しませんし、基本的人権の尊重や民主主義といった普遍的な理念は、改正にはなじみません。

 

しかし、現行憲法を唯一最高のものと絶対視するのは、権威主義的な発想であり、信仰にも似た思考停止状態というほかありません。

自由な議論を戦わせ、不断に選択され続けられるものこそが真に守るべき価値なのであり、不合理な心情から議論自体を放棄すべきではありません。

現代のことは現代の世代が、将来のことは将来の世代が責任をもって議論して判断するという仕組みを作るべきです。

 

改正手続のハードルが高すぎることから、すでに多くの「解釈改憲」が行われ、憲法空洞化の問題が発生しています。

 

例えば、現行憲法33条には「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」とありますが、刑事訴訟法で「緊急逮捕」が認められています。

これについては、「事後とはいえ、逮捕に接着した時期において逮捕状が発せられる限り、逮捕手続全体としてみるときは、逮捕状に基づくものということができる」といったこじつけの解釈で違憲ではないとされています。

憲法33条の素直な解釈からは、現行犯逮捕と令状逮捕しか読み取れないにもかかわらず、制度として必要な緊急逮捕を無理矢理の解釈によって認めているのです。

 

また、現行憲法89条は「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」と定めています。

素直に読めば、私立学校や慈善・博愛の団体の助成のために税金を支出することは禁止されているということになりそうです。

でも助成は現に行われていますし、今後も行われるべきです。

これについては、私立学校振興助成法を作って「所管官庁の管轄に服しているから公の支配に属している」という形をとったり、社会福祉法人等を作って間接的に支援したりといった姑息な手段を使って税金を支出する根拠にして憲法問題を回避しているのです。

 

憲法の不備や欠陥をこじつけの解釈や姑息な手段で補うのではなく、条文を改正して現実の問題に正面から対応すべきだと思います。

(横井盛也)

 

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「刑弁情報43号」-冤罪事件の事例報告

「被害者の頭部をコンクリートブロックで殴りつけ重傷を負わせた傷害事件で、目撃者こそが真犯人であり虚偽の供述をしている可能性が否定できないとして、被告人の犯人性を否定し無罪を言い渡した事例」

 

大阪弁護士会刑事弁護委員会が編集発行し、会員に配布する内輪の情報誌「刑弁情報43号」(43~47頁)に私が担当して無罪判決を得た事件の事例報告が掲載されました。当ブログでも紹介したことのある事件です。

 

検察側の立証は完璧に思われたのですが、悉く反証することに成功した奇跡のような事件でした。

裁判所は、書証に頼らない審理を目指して多くの証人を採用し、異例の現場検証まで行ってくれました。

真実を見抜こうとする裁判所の姿勢が強く印象に残る事件でした。

判決では、「Aあるいはその場にいたAの友人であるBやCが真犯人であり、Aが自分の責任を免れるため、又はBやCをかばって、虚偽の供述をしている可能性も否定できない。」とまで踏み込んだ判示をしています。

なお、AやBは検察側の証人です。

 

無実の被告人が無罪判決を得ることは当然のことのはずですが、いったん起訴されてしまうと冤罪を晴らすことは至難の業であることを実感した事件でもありました。

 

国家賠償請求訴訟も大詰めを迎えています。

捜査検事のみならず公判検事の過失が認められるのか否か、検察官が公判前整理手続で開示した証拠を国賠訴訟で使用することが目的外使用にあたるのか否か(刑訴法281条の4)といった従来にない争点についても新たな判例を作ろうと奮闘しています。

 

やりがいのある仕事に巡り合えたことに感謝です。

(横井盛也)

 

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シェアリング事務所の提供 究極のアファーマティブ・アクション

「月刊大阪弁護士会1月号」に藪野恒明会長の新春インタビューが掲載されています。

藪野会長は若手会員への支援について、「即独やこれに近い会員にシェアリング事務所を提供することを検討しています」、「事務所開設時の初期投資を支援するということです。」などと述べています。

 

根本から考え方が間違っていると思います。

 

弁護士たるもの、新人だろうがベテランだろうが、独立した自主自立の自由業者として自己責任で業務を行うべきです。

独立するための資金は、イソ弁をしたり、他の仕事をしたりといった自助努力で準備すべきです。

法律事務所に就職できないのであれば、他の職について開業資金を貯め、社会を知ってから弁護士登録すれば済む話です。

経済的に自立できない弁護士を増やすことは、不祥事増加の温床となり、弁護士自治の根幹を揺るがす事態を引き起こす危険すらあります。

弁護士会が率先して経済的に自立できない弁護士の跳梁跋扈を許すような施策を取るべきではありません。

 

裁判官や検察官が増加しない中で弁護士数の激増を放置し続けるのであれば、弁護士自治崩壊の日もそう遠くはありません。

若手会員の支援をどうするのか、法曹志望者の減少をどう食い止めるのか、法科大学院をどうするのか等々、様々な問題が浮上していますが、根源はすべて司法試験の合格者数が適正でないということから発生しているのだと思います。

(横井盛也)

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講演 「受診者とのトラブルへの処方箋」

ある医療関係団体が主催する勉強会で「受診者とのトラブルの処方箋」と題して講演をしました。

わがままなクレーマーやモンスターペイシェントの対応に四苦八苦し、スタッフが疲弊する医療機関は多く、講演後の懇親会でも多くの医療関係者から様々な相談が寄せられ、改めて関心の高いテーマなのだと感じました。

 

「クレームがあった場合、できるだけ早く穏便に解決するために全力を傾注すべきである。YESかNOか?」

 

私は、「NO」だと考えています。

確かに早く解決できるに越したことはありませんが、「できるだけ早く穏便に」とか「臭いものにフタ」という意識が強いとかえって事案を泥沼化させることにつながりかねません。

恐喝まがいの不当な要求には応じないという毅然とした態度を示すべきです。

多少時間がかかっても組織として冷静に対応すべきです。

「誠意を見せろ」は恐喝の常套文句です。

公正公平な解決を目指しましょう。

 

こんなところから始まって、これまでに経験した悪質クレーム事案の解決事例などをお話してきました。

 

ほんの一部の悪質クレーマーに振り回されて本来の業務に支障が出ることだけは、絶対に防がなければなりません。

今後とも微力ながら全力を尽くしたいと思います。

(横井盛也)
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