尊厳死宣言公正証書
- 2014-12-14 (日)
- 横井弁護士
これまで依頼者の公正証書作成のお手伝いをすることはあったのですが、先日、初めて私自身の公正証書を作成してもらいました。
公正証書は、公証人が法律に基づいて作成する公文書です。
遺言公正証書、金銭貸借契約や不動産賃貸借に関する公正証書、離婚に伴う慰謝料・養育費の支払に関する公正証書といったところが一般的ですが、私が作成してもらったのは、「尊厳死宣言公正証書」。
「私は、人生の終焉にあたり、人間らしく安らかに旅立てることを願います。」
「医学的に回復の見込みがなく、死期が迫っていると診断された場合には、死期を延ばすためだけの延命措置は一切拒否します。」
……(中略)……
「私の宣言による要望を忠実に果たして下さる医師をはじめとする医療機関の皆様、本宣言を尊重して下さる家族に深く感謝申し上げるとともに、以上の皆様が私の要望に従って下さった行為の一切の責任は私自身にあることを最後に申し添えます。」
どんなに医学が進歩しても致死率100%は変わりません。
人によって死生観は異なって当然です。
終末期、すなわち病状が不可逆的かつ進行性で、最善の治療によっても病状の好転や進行の阻止が期待できず、近い将来の死が不可避となったとき、とことんまで病気や老いと闘って延命を望むのか、苦痛を避けて安らかに逝きたいのか。
健康上の不安を抱えているわけではありませんが、私は熟慮の末、後者を選びました。
誰にも平等に一度訪れる死について考えておくことは、無駄なことではないと思います。
(横井盛也)
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ノーベル平和賞 マララさんの受賞演説
- 2014-12-14 (日)
- 横井弁護士
響きわたる甲高く透き通った声、威風堂々かつ一言ひとこと噛み締めるように繰り出される研ぎ澄まされた言葉の重みに圧倒されました。
This award is not just for me. It is for those forgotten children who want education. It is for those frightened children who want peace. It is for those voiceless children who want change.
…
One child, one teacher, one pen and one book can change the world.
…
Let this be the last time that a boy or a girl spends their childhood in a factory.
Let this be the last time that a girl gets forced into early child marriage.
Let this be the last time that an innocent child loses their life in war.
Let this be the last time that a classroom remains empty.
Let this be the last time that a girl is told education is a crime and not a right.
Let this be the last time that a child remains out of school.
Let us begin this ending.
Let this end with us.
…
CNNのライブ中継に釘付けになりました。
シンプルな正論。真正面からの直截的な訴え。後世まで語り継がれるべきフレーズで満ち溢れています。
選考について物議を醸すことも多いノーベル平和賞ですが、マララさんの受賞は、それ自体、世界を動かす原動力となりうるものです。平和を愛する人で、異を唱える人はいないでしょう。
ノーベル賞史上最年少17歳の少女の心からの叫びを聴き、教育の機会が保障されず過酷な労働環境に身を置く世界中の子供たちに無力な自分の小ささを知りました。
(横井盛也)
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違法収集証拠排除の壁
- 2013-07-17 (水)
- 横井弁護士
「本件捜査中、トイレの個室で用便中の被告人を監視した点に違法があったことが認められるところ、これが証拠の標目に掲記した各証拠の証拠能力を左右するかについて検討する。……被告人の尿の捜索差押手続が当該違法な監視を直接利用して行われたとはいえないから、上記の違法が被告人の尿の捜索差押手続の違法性を左右することはない。……前記各証拠の証拠能力はいずれも肯定される」
私が弁護人を務めた覚せい剤取締法違反被告事件の地裁判決が確定しました。
裁判所は警察の捜査の一部を違法と認定しましたが、違法収集証拠排除法則を適用しませんでした。
違法収集証拠排除は、最高裁判例によって確立された原則です。
手続が違法であっても証拠の価値に変わりはないのでは? 手続が違法だからといって犯人を処罰しなくてもよいの? といった素朴な疑問に対し、
最高裁曰く、≪事案の真相の究明も、個人の基本的人権の保障を全うしつつ、適正な手続のもとでされなければならないものであり……令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるものと解すべきである≫
しかし、現実問題としてこの原則が適用される場面は極めて限定的です。
捜査の一部が違法と認定されること自体、珍しいことです。
今回の判決は、「……そのような監視自体、被告人に相当な恥辱を感じさせ、被告人のプライバシーを制約する行為といえる。そして、当該トイレの構造上、トイレから逃走することは困難であり、用便中についてまで被告人を監視する必要性はうかがわれない。そして、被告人は、いまだ身柄を拘束されておらず、ドアを閉めるよう要求して警察官による監視を明確に拒絶していること、トイレ内に他の者がいなかったことに照らせば、自傷他害の防止といったあいまいな理由で、トイレの個室内の監視を正当化することもできない。……プライバシーを侵害して違法というべきである」と判示しています。
職務質問や所持品検査の方法、令状なしの長時間の留め置きについては適法と判断されていますが、違法と適法の限界で職務に当たらざるを得ない警察官の立場に鑑みると全くの誤りとはいえないのでしょう。
私が許せないと感じたのは、警察官が法廷で偽証したことです。
判決でも、「不合理な供述をしているのであって、その供述部分は信用できない」と断じています。
違法性を糊塗するために記憶に反した証言をして裁判所の判断を誤らせようとした行為は姑息としかいいようがありません。
最近は、ほぼ民事事件一辺倒となっていますが、民事では味わえない種類のやりがいを感じることがあり、「刑事はやめられない」というのが率直な心境です。
(横井盛也)
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日本国憲法改正について 6
- 2013-06-28 (金)
- 横井弁護士
日本国憲法は「不磨の大典」ではありません。
誤字すら散見され、だぶった条文も少なくありません。
国家の最高法規としては、あまりに杜撰です。
修正されずに放置され続けていることを恥ずかしく思います。
例えば、
7条に列挙された天皇の国事行為の4号に「国会議員の総選挙の施行を公示すること」とありますが、「国会議員の総選挙」は存在しません。
「衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙」と改めるか「総」を取って「国会議員の選挙」としなければ誤りです。
60条1項に「予算は、さきに衆議院に提出しなければならない」とありますが、正しくは「予算案」です。
細かい点をいえば、「さきに」も「先に」と改めるべきでしょう。
65条に「行政権は、内閣に属する」とありますが、内閣から独立した人事院や公正取引委員会などの独立行政委員会の根拠を明記し、「行政権は、この憲法に定める場合を除き、内閣に属する」と改めるべきです。
11条には「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」とあり、
97条には「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」とあります。
同じ内容の条文が2つもあり、ダブっています。
8条の「皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基づかなければならない」と
88条の「すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない」
も1つの条文にまとめるべきでしょう。
これだけみても、占領下において8日間で作られた憲法を施行から66年の議論を経た後に改正することは理にかなったことだと思います。
(横井盛也)
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刑の一部執行猶予
- 2013-06-24 (月)
- 横井弁護士
一部執行猶予判決が可能となる刑法の改正法が今国会で成立し、3年以内に施行されることになりました。
近い将来、「懲役3年。うち1年を2年の保護観察付の執行猶予とする」といった判決が出されるようになります。
これまで薬物事犯などでは、初犯の場合には求刑通りの懲役を宣告したうえで執行猶予を言い渡し、再犯の場合には求刑の7割程度の期間の実刑判決を下すというのが相場でした。
執行猶予判決か実刑判決かで処遇に雲泥の差があったことを思えば、より実情に即した中間的な判決が可能になるという点で意義のある改正だと思います。
とはいっても、重罰化の流れの中にある改正ということもできるでしょう。
今後は初犯者でも多くの場合、刑務所に収容されるはずです。
再犯者では刑務所収容期間が短縮されたとしても、その後の保護観察付執行猶予期間を合わせると監視期間は長くなります。
これまで初犯者の多くが執行猶予判決となっていたのは、短期自由刑の弊害を回避するというのが大きな理由とされてきました。
つまり、短期間であれ刑事施設に収容されれば、社会との関係が切れてしまうことにより社会復帰が難しくなってしまうこと、場合によっては刑事施設内の悪風に感染してしまう可能性もあること、前科者というラベリング効果により立ち直りが困難になることなどの弊害を避ける意味があったのです。
今後は、裁判所が判決時に,上記弊害を考慮に入れつつ全部執行猶予にするのか一部執行猶予にするのか、後者の場合は、さらに実刑期間と社会内処遇期間をどうするのかを判断しなければならなくなります。
弁護人の情状立証の重要性は増し、その責任はより重いものとなるはずです。
ところで、2012年版犯罪白書によると、2011年の一般刑法犯の再犯率は過去最悪の43.8%で、15年連続で悪化しています。
2度と犯罪をしないと決意して刑務所を出ても仕事や居場所を見つけることができず繰り返し犯罪に手を染めてしまう人が多いことは、刑事弁護活動をする中で実感しています。
再犯防止のためには、更生支援策を充実させていくことのみならず景気回復により皆が働ける社会にしていくことが必要なのだと思います。
(横井盛也)
刑法第27条の2から第27条の7が新設されます。参考までに、
刑法27条の2
次に掲げる者が三年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、一年以上五年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる。
① 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
② 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
③ 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
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