- 2013-06-24 (月) 11:54
- 横井弁護士
一部執行猶予判決が可能となる刑法の改正法が今国会で成立し、3年以内に施行されることになりました。
近い将来、「懲役3年。うち1年を2年の保護観察付の執行猶予とする」といった判決が出されるようになります。
これまで薬物事犯などでは、初犯の場合には求刑通りの懲役を宣告したうえで執行猶予を言い渡し、再犯の場合には求刑の7割程度の期間の実刑判決を下すというのが相場でした。
執行猶予判決か実刑判決かで処遇に雲泥の差があったことを思えば、より実情に即した中間的な判決が可能になるという点で意義のある改正だと思います。
とはいっても、重罰化の流れの中にある改正ということもできるでしょう。
今後は初犯者でも多くの場合、刑務所に収容されるはずです。
再犯者では刑務所収容期間が短縮されたとしても、その後の保護観察付執行猶予期間を合わせると監視期間は長くなります。
これまで初犯者の多くが執行猶予判決となっていたのは、短期自由刑の弊害を回避するというのが大きな理由とされてきました。
つまり、短期間であれ刑事施設に収容されれば、社会との関係が切れてしまうことにより社会復帰が難しくなってしまうこと、場合によっては刑事施設内の悪風に感染してしまう可能性もあること、前科者というラベリング効果により立ち直りが困難になることなどの弊害を避ける意味があったのです。
今後は、裁判所が判決時に,上記弊害を考慮に入れつつ全部執行猶予にするのか一部執行猶予にするのか、後者の場合は、さらに実刑期間と社会内処遇期間をどうするのかを判断しなければならなくなります。
弁護人の情状立証の重要性は増し、その責任はより重いものとなるはずです。
ところで、2012年版犯罪白書によると、2011年の一般刑法犯の再犯率は過去最悪の43.8%で、15年連続で悪化しています。
2度と犯罪をしないと決意して刑務所を出ても仕事や居場所を見つけることができず繰り返し犯罪に手を染めてしまう人が多いことは、刑事弁護活動をする中で実感しています。
再犯防止のためには、更生支援策を充実させていくことのみならず景気回復により皆が働ける社会にしていくことが必要なのだと思います。
(横井盛也)
刑法第27条の2から第27条の7が新設されます。参考までに、
刑法27条の2
次に掲げる者が三年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、一年以上五年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる。
① 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
② 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
③ 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
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