- 2013-03-23 (土) 16:07
- 横井弁護士
「修習生を一気に増やした結果、資質や能力の面でびっくりするような人が法曹になっている。…就職難等により法曹全体の魅力が低下すれば、法曹志望者の減少は避けられず、一層質の低下を招くことになる。」
判例時報2168号の巻頭に日本裁判官ネットワーク・シンポジウム「司法改革10年、これまでとこれから」のパネルディスカッションの内容が掲載されています。
注目はその資料7「法曹人口の拡大と法曹養成制度改革についての裁判官等の意見」です。
現役裁判官の個人的意見を聞く機会が滅多にない中で、その本音を知る貴重な資料だと思います。
冒頭の意見のほかにも、
「法科大学院と合格者増加による修習生のレベルの格差の大きさには驚きよりも不安を覚える。『競争させれば良い物だけが残る』という実証されていない幻想だけで運営されているとしか思えない。」
「即独では事件経験を積むのも難しい。そのため資質の差が登録後さらに拡大していく。」
等々直截的かつ刺激的な意見が紹介されています。
現役裁判官の心底からの憤慨や嘆息が直に伝わってくるようです。
自由競争によって需要と供給が適正に調整されるというアダム・スミスの命題は、需給双方とも合理的判断能力を備え、情報の非対称性がなく、その財が価格弾力性に富んでいる場合についてのみ当てはまるものです。
過少な法的需要に対して供給を適正に制限しなければ市場は失敗し、崩壊します。
法曹人口は既に飽和状態に達していますし、今後、弁護士に相応の報酬を支払ってまで解決しなければならない紛争が急増するとは思えません。
経験も積まずに能力など伸びるはずがありません。
既に負のスパイラルは始まっています。
供給を制限し、これ以上の法曹の質の低下を食い止めることが喫緊の課題です。
「司法を国民により身近なものにするには簡易裁判所の充実・強化を図るべきだったのであり、増大する法曹を弁護士ではなく、簡裁判事として採用し、地域で司法を身近にする役割を担わせるべきだったのではないか。」
簡裁裁判官の意見を読んで目から鱗です。
裁判官を判事(判事補)と簡裁判事に分けて別枠で採用することに合理性はあるのでしょうか。
検事が不足していた時代に窮余の策として設けられた副検事というポストを温存し続ける必要があるのでしょうか。
現状の就職難には焼石に水かもしれませんが、判事と簡裁判事、検事と副検事の一元化は、検討に値する課題だと思います。
(横井盛也)
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