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されどアンケート 統計の功罪

当ブログで1月28日に北村弁護士が、「アンケートなんて」と題して「調査結果などなんとでもなるのです。自分の結論に合わせたい調査結果を探してくることも、自分の結論に整合的な調査結果がでるように調査することもできるのです。」と書いています。

 

世の中には杜撰なアンケートも存在しますし、弁護士会は会員に対し、杜撰なアンケートを頻回に行っていますが、暴論か戯言としか思えません。

まともな会社が統計学的手法を無視したアンケート結果を公表することはないと思います。

調査方法や回収率等を吟味することもなく調査結果が異なることだけをもって、「調査結果などなんとでもなる。」と述べることは、意図的に調査結果を作り出したかのような印象を与えるものであり極めて問題です。

 

少なくとも政府やマスコミが発表している統計や世論調査は、私の知る限り厳密に行われています。

確かに、質問の仕方によって回答が異なってきますし、調査方法によって実態と乖離した結果が出てしまうことがあるといった限界があります。また調査結果の評価については分析する者の主観が入りますのでメディアリテラシーが必要だという点はそのとおりです。

 

例えば、総務省が毎月発表している「労働力調査」。

http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.htm

昨年12月の完全失業者は259万人で前年同月に比べ17万人の減少。完全失業率(季節調整値)は4.2%。前月に比べ0.1ポイントの上昇とされています。

でも、この完全失業率は、実態より低めの数字になるといわれています。

その理由は調査方法

http://www.stat.go.jp/data/roudou/pdf/10.pdf

にあります。

毎月、層化2段階抽出法で選ばれた全国約4万世帯を調査員が家庭訪問して調査票を回収しているのですが、失業期間が長く職探しをあきらめたとたんに失業者ではなくなりますし、調査日の前月の最終週にたまたま臨時の仕事があって1時間でも働くと失業者にあたらなくなるといった事情があるからです。

また、一家の大黒柱が失業すると主婦をしていた配偶者や学生の子らも職探しを始めることで失業率を一気に押し上げるという事情もあり、上記の完全失業率4.2%が社会の実態を正確に反映したものということはできません。

とはいっても完全失業率や有効求人倍率の推移は、政策判断上の重要な経済指標となるものです。「アンケートなんて」というのはもってのほか、「されどアンケート」なのです。

 

ところで、衆院選や参院選の選挙期間中に新聞各社は選挙情勢として、選挙区ごとに例えば「○○氏が一歩リード。△△氏と□□氏がこれを激しく追っている。」といった記事を掲載しています。

私も新聞記者時代に書いたことがあるのですが、世論調査結果をもとにしています。

調査結果は、調査日の各候補の得票率や順位を統計学上有意に示したものです。さすがに調査結果をそのまま掲載することはありませんが、調査結果をもとにした選挙情勢の分析記事を選挙期間中に掲載することが果たして公正な選挙のためによいことなのか疑問に感じています。

 

ちなみに、公職選挙法138条の3には、「何人も、公職に就くべき者(…)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない。」といった規定があります。

(横井盛也)
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