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弁護士の就職難

日弁連新聞1月号に司法修習終了者の登録状況が掲載されています。

昨年12月の2回試験で法曹資格を得た65期2080人のうち弁護士登録したのは1370人に過ぎず、裁判官・検察官の任官を除く未登録者は542人にのぼっています。

一括登録時点の未登録者は、新60期が32人、新61期が89人、新62期が133人、新63期が214人、新64期が404人と年々増加しており、就職難は数字の上からもはっきりと読み取れます。

 

一度ぶっ壊して新たな仕組みを作ろうとした司法制度改革の失敗の結果というほかありません。

 

即独や軒弁といった形態が増え、日弁連や各単位弁護士会は、経験の少ない若手へのOJT研修を行うなどの支援を強化する意向のようです。

しかし、私は、こんな小手先の中途半端な支援なら、しない方がマシだと思います。

 

弁護士の実務能力は、経験を重ねることで培われるのであり、イソ弁としてボスの下で仕事を学ぶ必要があると思います。

私は、イソ弁時代、何ものにも代えがたい貴重な体験をさせてもらったとボスに深く感謝しています。

 

かつて旧司法試験時代、合格者は長らく500人程度という時代が続き、平成3年頃から漸増しましたが、1500人を超えたことはありません。

即独、軒弁といった概念すらありませんでした。

ほとんどの弁護士は、ボスの下で朝から晩まで修業して仕事のイロハを学び、社会を知り、それから頃合いを見て独立するなどしていったのです。

私は、これが弁護士養成の正しい姿なのだと思います。

 

例えば、医師の世界において、資格取得後いきなり独立開業ということは考えられません。病院で何年も先輩医師の指導を受け、カンファレンス等で厳しく鍛え上げられ、医師として成長していくのです。一流と言われる心臓外科医は、何年も先輩医師の助手を務めるなどして技術を磨いています。

誰も、試験に受かって多少の研修を受けただけの新人外科医に心臓手術をしてもらいたくないはずです。

 

日弁連や各単位弁護士会は、多少のOJT研修で実務能力が身に着くといった幻想を抱いているようですが、実務能力は、何十件、何百件と実際の案件をこなすことで培われるのだと思います。

次から次に仕事に追われ、必死になってそれと向き合うといった経験が必要なのです。

 

社会の法律家に対する需要(社会全体の案件数)が増えていないにも関わらず弁護士の数だけが増えています。

国選弁護人の仕事を求めて大勢が群がっている様は、ある意味改善ですが、ある意味異常です。

仕事がないのに弁護士の能力が高まるはずはありません。

 

以上の次第で私は、弁護士養成の正しい方法が確保される程度、つまりイソ弁として修業が積める環境が整う程度まで、司法試験の合格者数を減らすことが必要だと思います。それが無理ならば2回試験の合格者数を減らすこと、さらにそれが無理ならば弁護士登録数を抑制することが必要です。

 

日弁連発行の司法改革パンフレット2011年度版「司法改革Q&A」http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/booklet/data/sihoukaikaku.pdf 

に、「法科大学院修了者の一部には法律基本科目の知識・理解が不十分で、法曹に求められている最低限の「質」を備えていない者も見受けられること、期間が短くなったことから法律実務家としての技能・倫理を磨かせることを目的とした司法修習がその役割を十分に果たせていないこと、若手弁護士の急増から新規法曹のOJTが不十分なこと等の問題が明らかとなり、これらの問題の克服が課題」とあります。

 

法曹に求められる最低限の「質」を確保できない弁護士の跋扈を許す日本弁護士連合会に自治など認められようはずはありません。

(横井盛也)

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