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貴重な体験 <取調べを受ける>

「…なんといっても弁護士は、信用が大切であり、勝手に私の名前を使って人を騙すなんて迷惑なことです。Aさんには、2度とこのようなことをしないよう深く反省し、しっかり更生してもらいたいと思います。…」

刑事さんから協力を要請されて、某警察署に出頭。

取調室で取調べ?を受け、調書を作成してもらいました。

読み聞かせの後、署名、押印して参考人供述調書が完成。

めったにない貴重な初体験でした。

(狭い密室で可視化<録音・録画>されていなかったのは残念ですが、感じのよい刑事さんで誘導質問等はありませんでした。)

 

このAさん。数年前に事件を起こし、その時に国選弁護人を務めたのが私でした。

その時は、反省し、もう悪いことは絶対にしないと誓っていたのですが、更生が不十分だったようです。

今回は、トラブルに巻き込まれた知人に対し、「よく知っている横井弁護士に事件の処理を依頼した。」などと嘘をついて、着手金の名目で数百万円を騙し取ったとの容疑だそうです。

逮捕、勾留されたAさんは、被疑事実を全面的に認め、「横井先生には大変お世話になったのに迷惑をかけてしまい申し訳ない」と反省の弁を述べているとのこと。

本当に迷惑な話です。

(なお、名誉にかけて強調しておきますが、私はいつも低廉な価格でご奉仕させていただいており、数百万円なんて着手金を貰ったことは一度たりともありません!)

 

もう2度と犯罪をしないという言葉を信じていたのに、今回のようなことがあって自身の無力を感じます。

 

ところで、刑事弁護人の役割って何でしょうか。

私は常々、誤った裁判をさせないこと、そして犯罪のない世の中にすることと考えています。

事実関係に争いがある場合には、検察側と弁護側が全く反対の立場から事件を検証し、主張と主張をぶつけあう対立構造の中からこそ真実が浮かび上がり適正な事実認定が可能になるのだと思います。

そして、事実関係に争いがない場合には、被疑者、被告人に有利な情状を主張するとともに心からの反省を迫ることで、再犯を防止できるのだと確信しています。

 

最近は民事事件の受任が増え、刑事事件がめっきり減っていますが、

今回の件にめげずに、刑事弁護人の仕事に誇りを持って、今後も精進していきたいと考えています。

(横井盛也)