- 2012-05-28 (月) 11:05
- 横井弁護士
「なんと勝ったのは、2番、2番、2番。大外からグングン差してなんと1着はレッツゴーターキン。そして2着は12番。ムービースター。勝ち時計は…」。
予想外の展開に実況アナウンサーは、勝馬の名前が即座に出てこず、声が上ずっていた。
トウカイテイオー、ライスシャワーなど時の名馬が揃った1992年秋の天皇賞。残り1ハロンで、人気薄の無名馬が大外後方から一気に馬群を差し切ったレースは圧巻だった。
この瞬間、私は176万円の不労所得を得た。
その後暫くして何となく競馬に対する興味をなくし、以後馬券を購入していないので、トータルで損をしていないことになる。が、馬券の売上げによりJRAが収益を上げ、また国の財政に貢献しているのだから、「損をしていない」というのは極めて稀なケースに違いない。
競馬は、事前に決まっていない結果について財物を賭けるものゆえ賭博罪にいう賭博にあたる。にもかかわらず、競馬をしても賭博罪(刑法185条)や常習賭博罪(刑法186条)に問われないのは、競馬法により正当行為とされているからだ(刑法35条)。
競馬等の公営ギャンブルは国や地方自治体の貴重な財源として、はたまたファンの娯楽としてそれなりに存在意義はあるのだろうが、はまりこんでしまい破滅してしまう人がいることも事実。仕事柄、生活資金までギャンブルにつぎ込んでしまって一家離散、挙句の果て犯罪に手を染めてしまったという悲劇的なケースに遭遇したこともある。
賭博罪の処罰根拠は、判例や通説では、「労働による財産の取得という国民の健全な経済生活の美風を守り、併せて賭博に付随して生じる財産犯などの犯罪の発生を防止するため」と説明されているが、建前にすぎない。
仲間内のトトカルチョや賭麻雀が賭博罪で処罰の対象になるのに、公営ギャンブルは何のお咎めもなし。いくら馬券を買おうが制限はない。
賭博罪の処罰根拠は、「ギャンブルを国の管理下において、公営ギャンブルの収益を確保するため」と説明した方が実情に即しているのではないかと思う。
せめて個人が購入できる馬券の額を制限するなどの対策がとれないものかと思うが、現状では自分でセーブするしかない。
偉そうではあるが、勝ち逃げした元競馬ファンから競馬で損をしないためのとっておきの秘訣を伝授したい。
<やればやるほど必ず負けるものだと心得るべし>
<勝ったらすぐに引くべし>
<負けても取り返そうとするべからず>
(横井盛也)