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座右の書②

「全盲の僕が弁護士になった理由-あきらめない心の鍛え方」(大胡田誠・日経BP社・1500円)

 

司法研修所の廊下で何度か彼を見かけたことがある。

クラスが違ったので接点はなかったが、全盲のハンディを乗り越えて司法試験に合格するなんて凄い奴がいるものだと感じていた。

その時は、ただそれだけのことだったが、今日、スーツに身を包んだ彼が白杖を持って堂々と歩く写真が表紙を飾っている本を見つけ、すぐに買って帰り、一気に読んだ。

 

うんざりするほど膨大な記録を読み、たくさんの判例を調べ、長文の書面を書かなければならない弁護士の業務において目が見えないことがどれほどのハンディとなるか、同業者として痛いほどよくわかるつもりだ。

が、大胡田誠弁護士は、「きちんと準備をしてきた人間にとっては、『もうだめだ』と思ったときが、限界の先にある自分に最も近付いた瞬間なのだと思う。

それはとても怖い瞬間かもしれないが、見方を変えれば、古い殻を脱いでもう一回り大きくなるチャンスがすぐ手の届くところまで来ているということでもある。

弁護士の仕事をしていて、これまで何度もプレッシャーで押しつぶされそうになったけれど、そういう時は、自分にこのことを言い聞かせて、なんとか乗り越えてきた。」

のだという。

そして、「だから無理」より「じゃあどうする」のほうが面白い、と言ってのける。

全盲の妻とともに子育てにも奮闘しているとのことで、仕事も家庭も充実しているようだ。

 

同期にこんな立派な弁護士がいるのだから、自分も頑張らなければ。

励まされる一冊である。

(横井盛也)

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