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「法曹人口の在り方について」2 ~ 決定的に欠落している将来を見通す能力

2015年はスティーブン・スピルバーグの傑作「バック・トゥー・ザ・フューチャー2」の設定年です。
1955年から1985年に帰還したマーティの前にドク(ブラウン博士)が現れ、マーティの息子がトラブルを起こす未来を回避するため、ガールフレンドのジェニファー共々デロリアンで30年先にタイムトラベルするというお話。
劇中の2015年では、車が空を飛び交い、宙に浮くスケボーで人が移動し、靴紐は自動的に結ばれ、秒単位で天気予報が的中していました。

 

1963年に日本初の国産テレビアニメとして放映された手塚治虫の傑作「鉄腕アトム」は、2003年生まれのロボットという設定でした。
人間の心を持ち、涙も流す。どんな計算も瞬時にできる電子頭脳を持ち、100万馬力の原子力モーターで最大マッハ5(宇宙空間ではロケットに切り替わり最大マッハ20)で空を飛び、人間の1000倍も聞こえる耳とサーチライトの目を持つ正義の味方でした。

 

どちらも設定年の現実は、劇中の未来とは程遠いものです。
旧態依然。昔と変わり映えがしない進歩のない世界です。
(ただし、「鉄腕アトム」に関しては、携帯電話が唯一、設定の未来を超えていたと話題になりました)
でもそんなことはどうでもいいのです。
エンターテイメントなのですから劇中の未来にワクワクし、夢見ることができればよいのです。

 

しかし、現実社会の政策に関して言えば、50年後、100年後とまでは言わなくとも10年後、20年後くらいまでは的確に見通して立案することが必要です。
前回のブログで、この国の役人、弁護士、学者は、先例をあてはめるのは得意であっても将来を見通す力が決定的に欠けていること、仮に司法試験の合格者を年1500人としても9年で弁護士の数は5万人に膨れ上がることを指摘し、近い将来だけでなく、10年後、20年後を見据えた議論が必要であることを述べました。
政策立案はエンターテイメントではないのです。

 

司法制度改革、就中法曹人口の問題に関していえば、10年前に現在の状況をどれだけ正確に見通していたのでしょうか。
法科大学院設立当時、誰も法曹養成制度の明るい未来を信じて疑っていませんでした。
たった10年足らずの間に法曹志願者がジリ貧に陥り、合格レベルが急落し、法科大学院がいくつも閉鎖され、需給の不均衡から食えない弁護士が巷間にあふれる惨憺たる現実を正しく見通していた役人、弁護士、学者が何人いたというのでしょうか。
10年前の想定と現実とのギャップについて検証すべきです。

 

これまでの教育に欠けていたのは、将来を見通す力の涵養という部分だったように思います。
「未来予測学」なんて学問群があってもよいのではないでしょうか。
大学教育の必修科目にしてもよさそうです。

 

優れた経営者は、常に5年後、10年後を見据えて行動しているはずです。
少なくとも政策立案等に関与する議員や役人になろうとするのであれば、10年後、20年後の予測と現実とのギャップについて検討する、不断の努力が必要ではないかと思うのです。
バラ色の未来だけを語る無責任は許されません。
(横井盛也)

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