- 2015-05-02 (土) 11:07
- 横井弁護士
大阪市を廃止して5つの特別区を設ける、「大阪市解体→地盤沈下」構想の住民投票が迫っています。
我が家にも投票所入場券や投票公報なるものが届きました。
(選挙公報によく似ていますが、こんなものを見たのは初めてです。)
街には各政党の街宣車が走り、駅前では様々なビラが配られています。
大阪弁護士会報4月号では <「大阪都」構想を考える~賛否両方の立場から~> という特集が組まれていますし、
事務所には「都構想に反対する弁護士の会への入会のお願い」などといったFAXが送られてきたりします。
大阪は今、とってもホットな状況なのです。
「長い物には巻かれろ」を人生訓に、あえて反対することより深く考えずに賛成に回ることが多かった私なのですが、
今回ばかりは「反対!」です。
住民投票ができるのは大阪市民だけで、それ以外の大阪府民は対象ではありません。
それもそのはず、大阪市解体で不利益を被るのは大阪市民だからです。
大阪市の解体、特別区の設置は、大阪市民にとって、何のメリットもありません。
一度解体されてしまえば、永遠に大阪市は復活できません。
大阪都構想は、その実、大阪市の”自殺”に他ならないのです。
賛成派は、「二重行政のムダをなくす」という点を強調し、
<府のりんくうゲートタワービルと市のワールドトレードセンタービル>、<府のりんくうタウンと市の咲洲コスモスクエア地区>の共倒れの例を挙げるのですが、
これらはバブル期に将来の展望を見誤ったことによる失敗例です。
病院、体育館、図書館、大学、美術館など多くの施設は、府立も市立も数多くの人に利用されています。
府と市の二重行政が問題なのであれば、府と市が協調する仕組みを作り上げれば済むはずです。
実際、昨年には地方自治法が改正され、政令指定都市と都道府県は、事務の処理について必要な協議を行うため(つまり、二重行政の弊害をなくすため)指定都市都道府県調整会議を設置することが義務付けられるようになりました(同法252条の21の2)。
協議が整わない場合には、総務大臣に勧告を行うよう求めることができ、総務大臣は国の関係行政機関の長に通知するとともに勧告調整委員を任命して意見を求め、その上で勧告を出すことなどが定められています(同法252条の21の2、3)。
この法改正で二重行政の解消が期待できます。
5特別区への分割には、新庁舎の建設やシステム改修に膨大なコストとエネルギーが必要となります。
大阪市の職員は、大阪府、5つの特別区や一部事務組合の職員となるのですが、
適材適所に配慮した職員の異動、事務の引き継ぎを行うだけでも大変な労力がかかります。
こんな内向きなことに金やエネルギーを注ぎ込むことこそムダです。
これまで大阪市という1つの役所で行っていたものを5つの特別区が行うことになり、
同様の部署を5つ作ることで行政コストが上がります。
国民健康保険、水道、システム管理、施設管理などについては5特別区で一部事務組合を設立するというのですが、それが驚くほど広範囲の事業に及んでおり、
「単に三重行政になるだけやおまへんか?」、と思うのです。
5つの区割りについても問題が多すぎます。
まとまりがあるのは、中央区と北区だけで、その周りを東区と南区と湾岸区の3つに分けただけという感じです。
住之江区は分割されますし、例えば鉄道が繋がっておらず距離的にも離れている旭区と生野区がどちらも新しくできる東区、といわれても釈然としないのです。
東京の場合は、23区の人口が東京都の約7割だからうまくいっているのです。
大阪市の人口は大阪府のたった3割にしか過ぎません。
半人前の5つの特別区が府の中で埋没してしまうことは火を見るより明らかです。
5月17日まであと2週間。運命のカウントダウンが進んでいます。
(横井盛也)
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