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「弁護士 転ばぬ先の経営失敗談」-成功談よりためになる失敗談

人間、誰しも失敗するもの。弁護士だって同じです。
大切なのは、失敗から何を学ぶかなのだと思います。
失敗は、「成功の素」です。
失敗から何かを学ぼうとする謙虚さが必要です。

 

そんな殊勝な心掛けから、
①「弁護士 転ばぬ先の経営失敗談」(失敗事例研究会代表弁護士北周士編著、第一法規、2500円)、
②「弁護士の失敗学 冷や汗が成功への鍵」(高中正彦ほか編著、ぎょうせい、3000円)
の2冊を読んでみました。

 

①は、20人以上の弁護士から集めた主に事務所経営に関する40の失敗談を赤裸々に公表するヒヤリハット事例集。
手軽に読める平易な内容でありながら、ポイントを突いています。
文字数の割にちょっと値段が高いような気がしますが、入門書として読んで損はないはずです。

 

②は、7人の弁護士の共著による本格的なテキストという感じで、読み応えがあります。数多くの弁護過誤判例や懲戒事例を取り上げて、失敗しないためにはどうすべきであったかを丁寧に論じています。
この本に書いてあることをすべてマスターし、実践しさえすれば、もはや失敗のしようがないのでは、と思わせるくらい内容が充実しています。

 

大きな失敗をすることなくここまでやってきましたし、今後も何とか軌道に乗ってやっていけそうな気になっているのですが、たまたま運が良かっただけのことかもしれません。
例えば、「仮執行宣言の付されていない勝訴判決に対して、相手が控訴。仮執行宣言を求める附帯控訴を忘れて上告審確定まで執行できない。」という事例。
これまでこんな場面に遭遇していなかっただけのことで、請求認容の勝訴判決に浮かれていたら陥りかねないミスだったと思います。

小さなミスや僅かな油断が取り返しのつかない大きな失敗に結びつく。
それが責任ある仕事をする者が常に抱えるリスクです。

 

世に成功者の自伝、評伝、合格体験記などが溢れており、読めば(自己啓発本と同様)成功者や合格者になった気分が味わえて爽快です。
でも、むしろ本書のような失敗談や不合格体験記を読む方が実際にはためになるのだと思います。
他山の石として活用できる2冊です。
(横井盛也)

 

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